Last Modified 2004/08/29



RGM−79SR ジム戦略偵察型特殊戦機



 イェンの搭乗したジム特殊戦機はちょうど母艦と戦線との間程度で推力移動を停止した。ゆったりと慣性で流れる機体にアポジカウンターを当て、戦線との相対速度を無くす。イェンは母艦へのレーザー通信回線を開いた。
「こちら第3特殊小隊特殊戦機1番機。戦線確認。機体固定後、戦況観測へ移行する」
『了解。貴機は収集情報の保全を第一任務とする。以上』
「一番機、了解。通信を終了する」
 前線ではすでに戦火が交わっていた。連邦側はジムを主体に8小隊。ジオン側の総戦力は未だ見えていない。輝点からの戦力推測では戦艦2。随行艦8。想定MS数は連邦よりも4機は多い。
「プラットホーム展開」
 ジム特殊戦機が背後に保持したコンテナの外装をパージする。畳まれたプラットフォームが軽い振動をコクピットに伝えながらジムの上下左右の4方向に展開された。
 『ハングドマン』。あたかも十字架に貼り付けられたかのようなこのジムのことを、前線のパイロットはそう呼ぶ。自らの保身を至上命題とし、戦場の全てを克明に−−友軍機が破壊されるその瞬間すらも−−記録しつづけるこの戦略偵察機を好ましく思っているパイロットは居ない。そう、自ら特殊戦機を駆っているパイロットですらも・・・。
「観測を開始する」
 イェンはプラットフォームに設置された全ての観測機材を稼動させた。戦場を見つめる無慈悲な目。その目が味方の不利を悟っても、特殊戦機が保身のために持つ強大な力を振るうことは、無い。

 前線では連邦軍のジムが刻々とその数を減らしていた。ジムの総数は16機。中距離支援のためのボールが42機。対するジオンはザクを主体に24機。戦力比ではそう差のないはずだった。いや、数値上では連邦軍の有利。戦力確認時点での彼我戦力値は53:47。しかし、あの戦場を我が物顔に疾駆する紅い機体が戦略論を仮定のものとしていた。
「マシス大尉!!あいつは!!ビームがぁ!!」
 恐慌状態となった部下の通信連絡。その直後の閃光。うって変わって沈黙する通信機。マシスはオートゲインが効いて輝度が下がったモニタを睨み付けた。
「紅いザク・・・彗星か、稲妻か、どちらにしてもここまで戦力差が付いてしまっては・・・な」
 パワーダウンを起こしたスプレーガンを放り出し、戦術支援コンピュータを近接戦闘モードに変更。背中にアタッチされたビームサーベルを抜く。高機動カスタマイズをされているであろう敵機を相手にするには、これ以上も無く心もとない。
 マシス機の後ろに控えたボールが砲撃を開始する。すでに隊長を失い、マシス指揮下となったジムがスプレーガンを発射。しかし、猛然と迫り来る紅いザクは弾道をあらかじめ教えられているかのような華麗な機動で全てを回避する。
「一騎打ちってかぁ!!」
 ボールによる支援砲撃は近接先頭に持ち込んでしまえば恐ろしくない。機動性にモノを言わせた吶喊攻撃をマシスは受けてたった。ビームサーベルとヒートアックスの鍔迫り合いは長くは続かなかった。

 戦闘は終わった。帰還数はジムが8、ボールが29。戦略的価値がほとんど存在しないこの戦いは、戦術的には完全な敗北だった。
 帰投するジムのカメラに白い十字架が映る。RGM−79SR・・・蔑称ハングドマン。味方を見殺しにする利敵主義者。奴はキムラが爆散するその瞬間も悟っていたに違いない。敵軍に戦力比をものともしないエースが存在することも戦闘が始まった瞬間に判っていたに違いない。奴の広域索敵能力が俺たちに味方すれば。その索敵能力に導かれた高機動ミサイルが有効に働けば。搭載された高度な機動予測コンピュータが艦砲を導けば。
『未帰還機8。全機の破壊を確認。パイロットビーコン0。戦闘後処理の必要は無い』
 生き残った全ての隊長機と後方の艦隊に対してレーザー通信が入る。味方の破壊される瞬間全てを見つめていたイェンの声は無機質で、コンピュータの合成音声のようにすら聞こえた。
 マシスはプラットフォームを畳んで回頭する特殊戦機を見送った。戦闘中、一度たりとも使われることの無かった高推力スラスターが蒼い光を放ち、戦闘空域から離脱する。その速度はこの部隊の全てのジムよりも速かった。
「この・・・死神が・・・」
 マシスは知らなかった。特殊戦機に乗ったイェンが常に敵機を高機動ミサイルのロック対象にしていたことを。そして、その発射ボタンを押すことが−−押そうとする意思すらも−−無かった事も。特殊戦機のビームライフルは一回も放たれることは無く、16基の高機動ミサイルはこの戦いでもその数を減らすことなく母艦のドリーに戻された。

 イェン・ワコム中尉、任務完了。取得情報については全て後方に位置する戦略情報センターに送られた。




サイコガンダム用データシート

RGM−79SR ジム戦略偵察型特殊戦機



移動力(W)

攻撃方法

命中値

威力

移動力(H)

3/10

ビームサーベル切る

+1

10

最大出力回数

ビームサーベル突く

+2

誘爆値

ビームサーベル受け

12

 

耐久力

シールド受け

 

指揮範囲

反応性能

3/5

ポイント

42

シールド性能

格闘戦闘能力

10+

装甲

回避値

シールド防御

正面

14

 

側面

13

 

後面

12

 

武装\距離

10

11

12

13+

タイプ

回数

ビームライフル

−1

±0

±0

+1

+1

+2

+1

±0

±0

−1

−2

−3

−4

13

12

12

11

11

10

10

右(左)

 

ミサイル

−3

−2

−2

−2

−1

−1

−1

−2

−2

−3

−3

−4

−5

8×2

(4)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

胴体

×8

戦略偵察:攻撃セグメント時にこのユニットの使用プレイヤーはマップ内全てのユニットを無条件で確認することが出来ます。但しその結果としてダミーが外れることはありません。また、この結果を他のプレイヤーに漏らしてもいけません。
単機行動:このユニットはあらゆる状態においても他の部隊の指揮下に入ることはありません。また、他のユニットを指揮下に入れることも出来ません。






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